ファイナルファンタジー10

PlayStation2初のビッグネームRPG。
そして、ぼくにとって第一作以来久々となるファイナルファンタジーシリーズ。

膨大になりすぎたシナリオスケール、複雑になった戦闘、成長システムなど
社会人がやりこむにはちょっと辛い要因が重なってしまったために、
気になる存在ではあったもののなかなか手を出すことが出来なかったソフト。

今回始めてみる気になったのは、実はヒロイン・ユウナの存在が大きかったりする。
かなり不純な動機ですな。(笑)
実際ポリゴンの絵であることはわかっていたけど、その絵のぱっと見の印象で
一発で惚れちゃったと言うのか、なんと言うのか。

あとは事前の情報で、クリアまで50時間程度ということがわかっていたこと、
そしてなによりもリアルタイムレンダリングのポリゴンでどこまでの「演技」が
可能なのかということに興味があったこと。

などなど、純粋にFFシリーズとしての作品に興味があって
遊び始めたわけではなかったわけ。

実際に遊び始めてみると、シナリオの面白さ、意外にシンプルな戦闘システム、
派手で美しい画面イフェクトなどなど、結局魅力的な要因がてんこもりで
睡眠時間を削って遊び続けてしまったのだけれど。

ゲームのつくりとしては序盤や新しいシステムが登場する時点では、
必ず丁寧なチュートリアルが登場する仕組みになっていて、FFシリーズが
初めてでもまずマニュアルレスで遊ぶことが可能なつくりになってる。

最初はいろいろと厄介に感じるシステムも、慣れてしまえば非常に楽しい。
戦闘システムでは、ターンを消費することなくメンバーの交代が可能な点が
いろいろな点でバリエーションを拡大するのに役立っていて、戦略を練るのを
楽しくしてくれている、と思う。

セーブポイントも非常に豊富で親切。
全滅するとその時点でゲームオーバー、差分の経験値が失われるFFのシステムを
うまいこと補完できていると思う。

また、PS2にプラットフォームが移ったことで、画面の表示能力が格段に
向上していて、画面が非常に見やすくなっていたのもいいところ。

フィールドを完全3Dで表現しているのだが、画面の奥のほうに行ってしまうと
フィールド上の自キャラは非常にちっちゃくなってしまうのだが、そんな
シーンでも十分な解像度を持った画面のおかげで、自キャラが背景にまぎれて
しまったりすることもない。

期待していたポリゴン人形の「演技」についてはまだまだ改良の余地というか、
ハードのパワー不足というかを感じてしまった。

「フェイシャルモーション」というのがひとつの売りになっていたが、
まだまだ微妙な表情の表現は無理で、肝心なシーンではプリレンダリングの
ムービーに切り替わってしまう。

まあ、ムービーのシーンのポリゴンと、リアルタイムレンダリングのポリゴンの
精度の落差はかなり小さくなっているため、違和感は減ってはいると思うが。

よって、細かい表情その他で「演技」させることはまだまだ難しいから、
ややオーバーアクションなポリゴン人形の全身を使った感情表現に頼る
部分が多くて、「演技」の印象としては舞台を見ているような雰囲気。
映画でもドラマでもなく、舞台ね。

しかし、ストーリテリングの方法としての新しい手法の実験としては非常に
面白いものだと思う。かなり成功していると思うし、新しい可能性を
示すものになったのではないかと思う。

で、肝心のストーリーのほうもなかなか良かったよ。
お約束のどんでん返しもちゃんと仕込まれてて、適当に伏線を張りつつ、
思わせぶりなシナリオ展開を見せつつ、次のエピソードを見たいという気持ちに
させる力は十分にあったと思う。

少なくともぼくの場合はいろんなサブシナリオ、おまけのクエストをすっとばして
ひたすらストーリを追いかける方向に突っ走らせてくれたから。

シナリオ展開上重要なポイントでは例のごとくムービーが挿入されるのだが、
ムービーのコーデックがMPEG2になったことで、圧縮にかかわるノイズは
非常に小さくなった上に、レンダリングやモーションプログラムなどが
どーんと進歩しているから、かなりすごい絵を見せてもらえる。

少なくともムービーの中では、ポリゴンによって作られたキャラクターであることを
忘れさせてくれるほどの「演技」を見せてくれる。
本気で見とれてしまうほど。

このクラスのCGムービーって数年前なら間違いなくSIGRAPHなんかで受賞する
ような映像だと思うよ。それがごく普通のコンシューマのゲーム機に
ばら撒かれる時代になっちゃったとはねぇ。

しかしひとつだけ大きな疑問点もあって、このソフトをRPGとして評価してよいものか
どうかというきわめて根本的なところがひっかかってる。

主人公に明確な個性と主張を持たせてしまったために、ゲームの中での主人公は
プレーヤの分身としての役目を果たせなくなってしまっている。
独立した一人格として、FF10の物語の中で存在を主張しちゃっているのだ。

このため奇しくも主人公が何度も繰り返す台詞のように、ゲームの中で展開される
物語はゲームのプレーヤの物語ではなく、この主人公のキャラクター自身の物語に
なっていると思うのだ。

こういったつくりのためにプレーヤは主人公役を「演じる」必要がなくなって
しまった。いや、演じることが出来なくなった、というほうが適当かもしれない。

このゲームでのプレーヤの位置付けは、ゲームの中のキャラたちが演じる物語を
外から眺める観客に近い形になっている気がする。
まあ、物語のキューを出すのはプレーヤだから、映画の監督あるいは舞台の黒子
といった立場が近いのかな。

というわけで個人的にはこのゲームはRPGではないと思っている。
RPG的手法を採用した新しいストーリテリングの手段かなと。

まあ、なんであれ語られるストーリーは楽しかったし、舞台を回すための道具
(戦闘や各種謎解き、クエストなどなど)も十分楽しめたから、ソフト自体に対する
評価は高いんだけどね。
ゲームなんだからおもしろけりゃなんでもいいでしょ。

さてさて、最後にきわめて個人的な問題点を。
本編のヒロイン、ユウナ。非常に魅力的ないい娘なわけなんだが、
プレーヤーとしてのazureが惚れるにはちょっときつい壁が。

彼女、ゲームの主人公であるティーダ君といい雰囲気な訳だ。
azure的感情としては、ティーダ君は自分の分身にはなり得ない。
よって、プレーヤたるぼく自身がキャラに惚れようと思うと、
それって横恋慕になるわけ。
さぁて、どうしたもんかねぇ。(笑)

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