椿色のプリジオーネ

MINKブランドのアドベンチャータイプのゲーム。
遊んだ感じまあまあ悪くはないのだが、傑作というほどのソフトでもないと思う。
けれど、ちょっとシナリオの展開について思うところがあったので、
忘れないうちにメモしておこうと思う。
なお、内容は完全にネタバレである。読む際にはご注意のほどを。

系統としては推理モノのような雰囲気をもつゲーム。
だが実際には推理や捜査の過程はゲームの雰囲気に影響は及ぼさない。

ゲーム規模は小さめ。
シナリオ数、エンディング数、CG数とも少なめ。
一回のプレー時間も短い。ただし分岐の構造は面倒で、
やりこみ型のゲームということになると思う。

シナリオは母の死にかかわる父との確執から、実家を離れていた主人公が父の死により
急遽財産を継ぐことになって実家に帰って来る。そしてその実家の屋敷の中で
起こる殺人事件に立ち向かう、というありがちなパターン。

なのだがこのソフトが面白いのはシナリオの分岐によって、毎回被害者も犯人も
違ってくるというところ。

ただし、どのパターンでもバックボーンとして1本通っているものは、
主人公が受け継いだ財産、そして、主人公と父、母の関係。
なのでプレーヤーが繰り返し遊んでいる最中にその辺のことで戸惑う
心配はないと思う。

シナリオのプロット、エンディングの落しどころは悪くないと思う。
エンディング付近のキャラのやり取り、流れはそれなりにプレーヤを
ひきつける魅力があると思う。

が、そこまでの過程がいまいちうなづけない。
ちょっと薄いのだ、キャラの描き方が。

トゥルーエンド以外のエンディングでは主人公特別な想いを抱いたキャラが
犯人というパターンで、そのキャラとの終焉が描かれるわけなのだが、
そこまでのキャラの描き方が薄っぺらであるために、どうしても
感情移入することが出来ない。
いかにもお涙頂戴の、安っぽい2時間ドラマの終わりのような印象しか残らないのだ。

よくよく考えたらシナリオのネタもまるまる2時間ドラマのパクリの
ような気がしないでもない。

1人を除けば、ハッピーエンドも存在しない。
非常に遊びつづけるのが辛い上に、キャラの扱いがあんまりのような気がする。
キャラがドラマのためのただの道具に過ぎないようなそんな感じだ。

だが、ことトゥルーエンドとなると印象が一変する。
トゥルーエンドは茜ハッピーエンドでありこれが唯一のハッピーエンドでも
あるのだが、全ての設定がツボにはまり、不満一気にが瓦解する。
(これははじめたときからぼくがある程度茜が気になっていたせいもあるだろう)

ぼくは最後にトゥルーエンドを見る形だったせいもあって、それまでにみていた
シナリオのおかげで、キャラへの想いも十分に出来ていた。
そこで全ての謎を解いた上であのエンディングであったから、今までの分も
いっぺんに感動が来てしまった感じになって、泣けてしまった。

と、ここまでゲームを進めてふと思った。
トゥルーエンドへのシナリオ以外は全てこのエンディングを盛り上げるための
1ピースに過ぎないとしたら?

他のシナリオで茜の主人公への想いをプレーヤにわからせた上に
このトゥルーエンドが存在するとしたら?

そこまで計算ずくの上のシナリオ構造だとしたら、MINK開発部に拍手、である。
単なるプレー順のいたずらだとしたら、ぼくはとても幸運な遊び方をしたのだろう。
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